★池の拡張計画から、池の良好な生態系の維持確保について話し合われた協議会の記録(2018~2024)をまとめた報告書ができました。★


大森サンクチュアリー 誕生物語

大森調節池のビオトープは私達の活動により、入間市内で唯一、人の手で自然が豊かになった場所です。


狭山丘陵と加治丘陵の「緑の回廊」の一部として貴重な場所になるのではないかとビオトープ化を考え、要望を出したのは、今から20年以上前です。

入間市緑の基本計画の中でも「貴重な水辺」と認識され、埼玉県でも貯水機能と豊かな環境を両立した斬新なケースと注目されました。

大森調節池は、1988年頃から、不老川の洪水対策用の池として、入間市宮寺に掘られました。

計画ではとても広い面積(32ha)なのですが、土地買収がなかなか進まず、現在は暫暫定の計画(総面積6.43ha、うち池3.8ha、貯水量105,300㎥)となっています。

このあたりの地下水位が高いため、1m程掘ると水が出てきます。洪水時以外はグランドとして利用するはずでしたが、矢板を打って地下水を止めるのはその影響が予測できず、整備するにはコストがかかりすぎるということで小康状態となっていました。

しかし悪いことばかりではありませんでした。この地域は「鍬が入らない」ほど水分の多いじめじめしていた土地だったのですが、池によって、水はけが良くなり、畑に適した土地となりました。特に良質のお茶ができるようになったといいます。

敷地内には草も茂り、きれいな湧水が湧く水辺もあることから、生きものたちがだんだん集まって来るようになりました。初めて見るサギに地元では「ツルが来た!」と言った人もいたそうです。

治水機能と生きものたちの空間を!

ビオトープ化する意味

1)狭山丘陵と加治丘陵を結ぶ「緑の回廊」(生き物が行き来する場)として貴重な拠点のひとつとなる

2)水場、林、草地と多様な環境ができるため、多様な生物が生きられる(+カエルのように林と水辺を行き来する生き物もたくさんいる)

3)市民の憩いの場、自然と触れ合える場になる

4)洪水時、治水施設になる。建設施設ではないので復旧の必要もない

私達はこの池を、洪水時以外は生きものたちの場所(ビオトープ)となるような工事や整備をして欲しいということを、1993年から県に要望をしてきました。

当初県は受け入れられない姿勢をとっていましたが、入間市長はじめ議会でも「自然のままに」という意見が出だし、また環境の視点が加わった「河川法の改正」もあって、ついに1997年、トンボの産卵場所作りのための池の中のガマ刈りが許可され、1998年には植樹のための2000㎡の占有許可(現在は手続き上の理由で所有者は入間市)が出されました。



治水機能については問題を抱えた調節池ですが、湧水がある以上、池の面積を確保するしかありません。

また不老川の洪水は、大森より下流の急速な開発(住宅や道路開発、狭山台工業団地からの水)が原因であることも否めず、地域ごとに治水対策をする総合治水の考えも提案してきました。

(下藤沢「珈琲館」下流に小規模な自然型遊水池を造ることを「不老川流域川づくり市民の会」とともに提案もしている)

林づくり

新しい河川法の考え方

河川改修、災害復旧は「溢れない川」をつくることではなく、川のある地域の暮らしを豊かにする。河川空間の質を高めること。

災害復旧は河川施設の復元ではなく、地域の風景の復元を意味する。

*植樹(1998年から2004年)

約500本の植樹を行いました。

大森調節池の林は、地域の林を調査した結果、同じ植生で植樹されています。子供達が林で拾ったどんぐりから苗を育てたり、開発され伐られてしまう林から移植してきた苗もあります。小さな苗たちを守るため、毎年背よりも高く成長するカヤやススキを年に3~4回も刈る作業をしました。

(写真は植樹風景と10年後の同じ場所)

公園や市内で見かける林は、樹木と地面だけといった印象ですが、大森の林は高木中木低木と下草が茂っています。林の中はたくさんの植物が、光や栄養を分け合って生きていているのです。「この植物しか食べない」という偏食の昆虫たちの胃袋をこの林は満たしてくれます。

若い木も古い木もそれぞれ利用する生きものがいるので、現在は間伐しながら萌芽更新させ、若い木も育てています。

*ハンノキの林

埼玉県の蝶、ミドリシジミが制定された記念事業「ミドリシジミの森づくり」1998年度事業で、300万円をかけて、池の南東部分に400本のハンノキを植えることになり、私達も手伝いました。管理は入間市が行っています。

たくさんの生き物のために

*池の草刈り

きれいな湧水がわく池と林があるこの環境には、たくさんのトンボ(32種が観察)が集まってきました。林の中で過ごすトンボがいることを初めて知る人も少なくありませんでした。多様な環境をつくればたくさんの生きものがやってくる可能性があるのです。

トンボの中には開水面がないと産卵できないものがいます。また、水鳥にとっても必要な環境ですので、池の中の生い茂るガマやフトイなどの草刈りも行いました。夏の暑い時期でしたが、水の中は涼しく、トンボがいるので蚊にも悩まされませんでした。

(写真はバンの卵とアオモンイトトンボ)

*フナ、メダカの救出、池堀り

当時「不老川には魚がいない」と言われていたのですが、1997年、初めてメダカらし魚を見て一同大喜び。その後魚群も見ることがあり、調査でフナなど6種を確認しました。(最近貴重なジュズカケハゼも見つかっています。→生きもの情報)

1999年の冬に池が干上った時にはフナやメダカの救出を行いました。全部は助けられなかったのですが、なんと1000匹以上の魚を学校や個人のお宅へ避難させました。渇水期をしのぐため、池の掘り下げ(水のたまり場)なども行いました。(後に治水の面からも必要と、県により一部の掘り下げが行われ、池が涸れることはなくなりました。)

*カエルの救出

池に産卵にやって来るカエルたちが周囲の道路で車に轢かれるのを防ぐため、1999年からカエル救出が始まりました。多い時には1200匹以上のカエルを救出。冬の雨の夜の危ない作業でした。入間市にはカエルトンネルも作って頂き話題になりました。

カエルたちはふだん林や畑で暮らしているため、早く植樹した苗が育ち、こちらの林で活してくれるといいなあ、と全員が願いました。

(写真は 上:池の敷地にカエルを放すところ 下:救出した産卵間近のニホンアカガエルたち)

*ウシガエル退治

ウシガエルは外来種です。その土地固有のカエルを絶滅させてしまったり、水鳥のヒナを食べたり、生態系に悪影響を与えると海外でも問題になっています。大森の池でもアカガエルたちやカイツブリやバンのヒナが心配です。

池が干上がる冬にウシガエルのオタマジャクシの退治を行います。水が涸れてもガマなどの根元に潜り込み生きのびていて、そのしたたかさに驚かされました。退治したオタマジャクシはサギたちも食べませんでした。

みんなの力で

*生物植物調査

調節池敷地内では669種にのぼる生きものが観察されています。しかもミズニラ、ミクリ、カワヂシャ、オオルリボシヤンマ、マルタンヤンマ、ババアメンボなど10種にも及ぶ絶滅危惧種や希少種が観察されました。

また調査により、ここ独自の生態や習性を持つトンボも見つかっています。

植物、鳥類、昆虫、魚類などの生態調査には専門家の方々が「大森の池ファンクラブ」として関わってくださり、それらの調査報告や池や治水にまつわる歴史などをまとめた報告書を作りました。(写真 大森の池の生い立ちや10年間の観察記録などをまとめた情報誌『-ガイドブック- 大森調節池の生き物たち』2001年1月発行 / 60ページ / 1000円)



*「鳥になろう 魚になろう 大森の池まつり」開催(2000年~2015年 全15回)

子供達に自然体験をしてもらいたいと2000年夏「大森の池まつり」を開催しました(その後「池まつり実行委員会」主催)。ザリガニ釣り、トンボ釣り、バッタ採り、カヌー体験、水質調査やネイチャーゲームなどを行いました。また緑のつながりを見てもらうため気球やはしご車の出動もあり、多くの方のご協力をいただきました。

毎回約400人の参加。リピーターも多いイベントとなりました。

数々の作業や調査、池まつりは「埼玉県生態系保護協会本部」「不老川流域川づくり市民の会」「水と緑のネットワーク」「大森の池ファンクラブ」「ヤマガラくらぶ」、地域の皆さん、行政の方など大勢の方のご理解ご協力により行うことができました。

つながる緑

*工業団地の緑=周囲の緑と繋がる

林の東側、隣接する所沢市の土地は、もともとは調節池の拡張予定地だったのですが、工業団地が建設される事になりました。

私達の取り組みを知り、敷地内の植栽を林と繋がる自然の樹種にしたいと、環境事業団パシフィックコンサルタンツ株式会社の方から相談があり、1999年夏から2000年夏にかけて何度も話し合いが行われました。(大森の池ファンクラブとして対応)

2000年8月に、団地内の植栽設計が完成され、その通りに植樹されましたが、後に転入してきた工場の管理者には、これらの主旨や管理方法が引き継がれなかったようです。

(写真は設計図 大森調節池の林と隣接する緑地帯の計画)

自然はなるべく大きな塊が良い、またそれぞれをつなげていくのが自然を豊かにしていく原則です。孤立した小さな自然ではやがて滅びてしまいます。

狭山丘陵と加治丘陵を結ぶ「緑の回廊」の一部として育ってほしかった大森調節池の自然。

ホンドカヤネズミ(希少種)やタヌキ、イタチは、もしかしたら狭山丘陵からの「緑の回廊」を伝って来たのかもしれません。それは林だったり、畑だったり、U字溝になっていない小川だったり、生け垣のある庭だったり、ちょっとした植え込みだったり、ちっちゃな草がはえてる空き地だったり…


秩父連山までつながりを持つ魅力的な加治丘陵へと続く「緑の回廊」づくりは、未来の子供達へ豊かな自然を手渡さなければならない私達の責務ではないでしょうか?

(写真はタヌキの親子)

          

 ↓ 緑の回廊、あなたはどこに造りたい?

大森サンクチュアリー 池と林のその後

植樹から20年ほど経ち、林もりっぱに育ちました。

新緑の春は、敷地内の植物や池の水生生物の観察会&摘み取った野草の天ぷらで楽しみます。

初夏から夏にかけては、草刈り、ツタはらいを行います。大きく育った木々の下、作業の後は冷たいスイカを頂きます。明るい木陰がありがたい!風でも吹けば最高のロケーションです。

冬は間伐作業。最近は、セミプロの方に手伝ってもらわないと伐り倒すことが出来ないほど大きな木を倒します。作業の後は美味しい豚汁が待っています。

作業中、うれしいことに池で孵った子ガエルの集団やりっぱなヒキガエルに出会うこともあります。大きなヘビが棲息できるほどここの自然は豊かなんですね。

まさに大森サンクチュアリーの名にふさわしく、本来の目的が達成できている証拠です。

また池は不老川の魚の供給源ともなっています。銀ブナ以外にもジュズカケハゼの繁殖が観察されています。

埼玉県絶滅危惧種Ⅱ類タコノアシや準絶滅危惧種のミクリなども見つかり、棲息域を広げています。

他の林と違うところはどこでしょうか?

住宅地の近くの公園や林、街路樹などと大きく違うところは、枝振りがとっても自然なこと。

いつの頃からか、街中の木は、電信柱のように伐られたり、出たばかりの新芽さえ枝打ちされてしまいます。

大森の林は、広いところではのびのびと、まわりに他の木があれば、そのすき間を狙うように競争しながら育っています。

そしてまた、最も大きく違うところは、

大きな木、中くらいの木、低い木、いろんな草など、たくさんの姿をした植物が茂っているところです。

多くの林や公園は、木が立派でも、あとは地面だけ。草一本生えていなかったり、落ち葉すらないところもあります。

大森の林の中にはたくさんの種類の植物がいて、それぞれの植物に頼っている昆虫や鳥がいます。静かに耳を澄ますと、たくさんの生き物の気配を感じるのです。

治水と自然の調和はあるのか?

2016年台風9号で、不老川流域は大変な被害を受けました。

国から多額の予算がつき、治水対策として、上流では、4橋の拡張工事と、大森調節池の貯水量をあと5万トン増やすための拡張工事が計画されています。

調節池の敷地内、県の事業であったミドリシジミの森と、帯状にあるわずかな大森の林も潰して池は拡張されるのでしょうか?

開発が進むと、その地域での雨水の浸透力が激減します。大規模開発の場合は、その地域で受け止められなくなった水量分を「調整池」に貯めることになっています。しかし小規模な開発(住宅、道路など)にはそうした規制がなく、すべて川に流れるがままになっています。

上流のどこかで大量の水を蓄えても、その下流から大量の雨水が流れ込めば洪水は起きてしまうのです。

治水問題は地域全体で総合的に考えられていかなければならない問題ではないでしょうか?

官民で“残す”を探る

2018年10月飯能県土整備事務所から池の拡張計画についての説明がありました。10万㎥から15万㎥に貯水量を増やすため、林を伐採したいとの申し入れでした。

市民サイド(入間支部、不老川流域川づくり市民の会)の話し合いが数回行われ、その結果、そこに棲息する生き物だけでなく、林づくりや保全管理に関わった人数と年月などを含めた、林の存在の価値を認めてもらうことができました。

しかし、貯水量を満たすため、池を深掘りするわけにもいかず、どうしたものでしょうか?

後日、飯能県土整備事務所から新たな提案として、拡張分を池の南側の「土地買収」で検討するとの回答がありました。

私達が植樹した林とミドリシジミの森が残ることになりました。(ミドリシジミの森は道路付け代え工事のため一部伐採)

池の西側の取得用地については、2018年度から拡張工事が始まりすでに完成しました。


2018~2019年にかけ、池の中に溜まった土砂を排除する浚渫工事についても、貴重植物な水生植物(タコノアシ、ミクリ、カワジシャなど)をどう残すのか、水生昆虫や水鳥の棲息になるべく打撃を与えない工事の進め方など、話し合いの場を設けるばかりでなく、実際工事が行われる前には現地での打ち合わせも行われました。(3回に及ぶ。結果、貴重な植物や鳥たちの隠れ場所を守るため、東の水辺は自然のまま、池のアシ類、ヤナギ類も数カ所残されました。)

懸案だった南側の土地も確保でき、2019年後半から工事は始まりました。(完成予定2025年)


(写真は打ち合わせの様子と保護された池東側の水辺)

注目される大森調節池

調節池の機能を持たせながらも、生態系に配慮した取り組みを、官民一体で行われた稀なケースとして周囲からは注目を集めました。池と湧水、林という環境も魅力で、人々を引きつけました。

年に1~2回行われる生物・水質調査では遠方からわざわざ参加される「大森ファン」は少数ではありません。

2022年3月19日行われた「"いい川"づくり研修会・首都圏」(NPO法人全国水環境交流会主催・国土交通省後援)では、協働によるモデルケースとして発表を依頼されました。

落ち葉問題

*落ち葉問題、樹木の管理の考え方

林に隣接する工業団地の管理組合から、林の落ち葉や草についての苦情がやみませんでした。

工業団地と林との緩衝地帯の緑地は、自然が続く植栽にデザインされていました(つながる緑の章)。工業団地側(東側)の大きなイチョウが茂れば、林の樹木が外に張り出さず、下の植え込みで落ち葉も止まるはずでした。

管理の仕方が受け継がれず、今の管理は「草一本生やさない」「イチョウも切り詰める」など過剰な管理によって、土壌は吸水力も保水性もない土となり、林の木よりも小さくなってしまったイチョウは新芽を出しては枯れる、ということをここ数年繰り返し、樹勢も衰えてしまいました。地面には除草剤の後生える苔しか見られません。


2021年11月、以前から、飯能県土整備事務所に、所沢市、管理組合と話しあいの場を設けてもらえるようお願いしていましたが、それも叶わず、一方的な要望で林の境界線周辺が剪定、伐採されてしまいました。

林は半分の薄さになってしまいました。


こういった解決方法は、お互いに誤った認識を持ち続けることになります。私達はお互いの理解が深まるような緑地を考えていく場を要望していきたいと思います。

急速に進む工事

こうして20年以上かけて、官民協力して豊かにしてきた大森の多様な環境ですが、2021年以降様子が変わってきました。

2019年の台風19号の被害を受けて大規模な河川整備(不老川床上浸水対策特別緊急事業)が急速に進み、計画段階での話し合いは行われなくなりました。

「コロナ禍」のため事後報告になった、と飯能県土整備事務所は言っていますが、実際協議をしてみると、今までの私たちとの協働関係や、生態系に配慮した事業(東岸を自然のまま残す、池の中の希少種保護など)について、全く引き継がれていないことが判明しました。

環境へダメージを与えた一番の理由「管理費削減」

*管理が容易?巨大建造物へ

今回の設計では、全く環境への配慮がなされていませんでした。「治水と関係のないところはできる限り自然の状態で残す」という今までの「官民で築き上げてきたルール」が全く無視したかたちとなりました。その大きな理由は「管理費削減」でした。

年2回ほど行われていた草刈りの費用を削減をするため、管理道路はじめ、堤防や外側法面など、草のはえる場所は全て舗装するという連絡がありました。

かつては貴重なニリンソウの群生地を守るため、草刈り時には立ち会って欲しい、と言われるほど細かく配慮した作業が行われていましたが、そのニリンソウの群生地もコンクリート護岸のため消滅してしまいました。

(写真は管理道路のためにダスト舗装された堤防と堤防外の草地。樹木も抜根され、林と池が分断されました。)

*埼玉県の事業であるハンノキ林も伐採抜根

埼玉県が300万円かけた事業ではあったにも関わらず、埼玉県みどり自然課は、資料がなく引き継がれていない事を理由に関わりを拒否しました。(2018年までは憶えている職員がいました。)

占有許可者であった入間市も、今は管理を依頼していた団体がなく、占有許可も取り下げていて、今後の管理はしたくないとの返答をしたため、「管理者不在」となりました。

ハンノキ林のあった場所は池拡張工事で何の計画もなかった場所ですが、管理者不在のため「管理費削減」という名目で2022年早々に伐採抜根されてしまいました。

(写真はかつてのハンノキ林)

*自然は一体誰のもの?

管理費は無駄な費用なのでしょうか?多様な遺伝子を持つ自然を未来の為に残すことも行政の任務ではないのでしょうか?

林を守ることも選択した池の拡張工事計画。自然と共生した広い水辺が広がる予定でしたが…

林だけがポツンと残る巨大な白い建造物になってしまうのでしょうか?

今まで積み上げてきた官民の関係や生物に関する情報もむなしく、また埼玉県多自然かわづくり基本指針や新河岸川ブロック河川整備計画などある中、環境に配慮された工事は計画されていませんでした。

2022年より関係団体と行政側の協議会を6度ほど持ちましたが、担当課は協力的ではあったものの、私たちが要請した資料、データも示されないまま、これといった前進のない会議となり、いくつかの不要な工事を取りやめてもらう程度にとどまりました。

新しく造成する西側と南側の池に関しては、生態系への配慮は特に考えていなかったということで、管理道路、市道、池以外の敷地については全てアスファルト舗装となりました。

工事後の生き物への影響

2023年8月にはほぼ今回の大規模な拡張工事が終わります。

毎年2回行われる生物水質調査では、この2年ほど生き物の種類が減ってきていることを感じます。特に工事によって土砂が大量に北側の池(不老川沿いの旧池)に流れ込み、陸化したり、底に溜まった泥がガスを発生し水質悪化を招いています。水生生物や水鳥にとって生息繁殖環境が激減しました。土砂が溜まるのは治水面においても問題があるため、まずは浚渫(底ざらい)が必要と考えています。

他にも工事によって環境にどの程度影響があったのか、更に詳しく精査する必要があります。


また南や西の新たな池の環境をどうしていくのか。今後池の敷地全体の生態系を豊かにするための取り組み方も、埼玉県河川環境課、飯能県土整備事務所と共に協議しながら検討していくつもりです。

地域で育てる

大森調節池の環境は地域の財産です。

洪水時以外は豊かな自然が営まれていて、人間にも生き物にも役に立つ「施設」です。

しかし、人が造りあげたものですので管理作業が必要です。

現在の大森調節池は、ビオトープ化の提案をし、植樹の手続きなど、事務的な窓口は埼玉県生態系保護協会入間支部が行いましたが、多くの人が関わり、市民も行政もともに造りあげたものです。


2000年頃から、草刈りや間伐など林の管理作業は、入間支部が中心に行うようになりました。正直、人手が足らず、会員の高齢化もあり、作業が追いつかない状態です。


「地域の財産」として地元の入間市と入間市民、そして周辺地域の人々、また「豊かな自然を未来の子供達に残したい」と想う多くの人が関わり、育て守っていきたい大森調節池なのです。

*2023年12月 「大森調節池の自然を考える連絡会」発足

飯能県土整備事務所との話し合いで、ハンノキ林跡地に簡易駐車場を整備することに決まりました。

大森サンクチュアリーの観察会や作業などのイベントで利用できるようになりました。

世界の事情

海外では、こうした自然のかたちにした調節池が主流です。大雨が降れば川や周辺から溢れた水がここに溜まる仕組みです。

施設としての管理費もかからず、多くの生き物の生息地にもなり、市民の憩いの場にもなります。住人達もこうした調節池を望んでいるということです。